大連レポート
○中国のコメ市場について
2019-01-31
昨年11月、中国政府は東京電力福島第1原発事故後から行っていた新潟県産米に対する輸入停止措置を7年ぶりに解除し、これを受けJA全農は、1月9日に解禁後第1号となる新潟県産米を横浜港から出荷し、今後上海でテスト販売すると発表しました。報道によると今回出荷したのは県産コシヒカリ1トンで、2キロ入りパックで販売し、中国の消費者の反応を見た上で出荷量の増加も検討するとのことです。
全人口約14億人のおよそ65%が米を主食とする中国の2016年米生産量は約1億4500万トンで、世界全体の生産量の3割を占め、2位のインドに約3800万トン差、10位日本(778万トン)の約18倍でダントツの1位となっています(東方財富網「2017年中国米市場予測研究報告」)。主要産地は東北部の黒龍江省、揚子江中下流域の湖北省、江西省等で、特に黒龍江省の「五常米」は有名です。一方、同報告書によれば、中国は2016年の米輸入量も約353万トンで世界全体の1割強を占め首位となっています。8割方は隣接するベトナム、タイの安価な米と思われますが、中国で不足している高級米の一部品種をベトナム、タイからの輸入で補充しているとの調査結果もあるそうです。また、日本からの輸入は金額ベースで0.2%程度(2015年)とのことです(農林水産省「中国の食糧安全保障政策と食糧輸入」)。以上のこと等から、今後新潟米と競合するのは中国産高級米、ベトナム・タイ等の高級輸入米及び先行する他の日本産輸入米と思われます。
大連市内の高級百貨店の食品売り場では、中国産米8商品のうち6商品は黒龍江省五常産でした(他の2種類は黒龍江省寧安市、吉林省通化市)。また8商品中4商品が香り米(玄米に香りを持つ品種)、3商品が有機米でした。平均店頭価格は355円/kg程度で、最も高かったのは東北の吉林省産有機米で約640円/kgでした。一方タイ産輸入米は3商品置いてあり、平均約393円/kgで最も高かったのは580円/kgでした。気になる日本産米は産地は表示されていませんでしたが、「にこまる」、「こしひかり」、「ちほみのり」等の品種5商品が1パック2kgで販売されており、平均単価は1,439円/kgでした。販売状況を伺ったところ、メインの売り上げは中国国産米で、日本米は週20~30パックの売れ行きとのことでした。こちらの百貨店の責任者の方に、新潟産コシヒカリの今後の中国での販売についてアドバイスを伺うと「中国の所謂中流以上の方は新潟のお米が美味しいということは御存知」とその知名度の高さに太鼓判を押しつつ「近年、中国では一人暮らしが増えていること、外食の時間が取れない等の事情でHMR(食事を家庭内で作らなくていいよう惣菜等調理済のものを提供すること)の取組が進んでおり、当店でも中国東北米を使ったおにぎりが良く売れている。袋売りに加え、惣菜やパックご飯として売っていくのも良いのでは」と御提案いただきました。
大連で日本食品等を専門に扱っている小売店の責任者の方は、やはり「新潟のコシヒカリは日本美食の代名詞」とその知名度の高さを指摘した上で「(一般貿易に比べ関税が安い)越境ECでも販売すればより多くの方に買ってもらえるだろう」と話されていました。
かつて中国で日本米の販促に関わった知人は「消費者はどうしても安価な方を選ぶ。また他の日本米との差別化も重要。米単独で売るだけでなく、例えば中国人に田植え・収穫体験をしてもらい、そのお米を納品するといった、新たな体験とのセットで売る等の取組も重要」と話していました。美味しさに加え、「便利さ」、「今までにない体験」等といった付加価値をつけていく取組の必要性を改めて実感しました。
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