大連レポート
○物産展から垣間見る消費行動
2015-03-31
3月末日、年度末の東京株式市場は利益確定売りに押され日経平均株価が大幅反落する中、炊飯器・魔法瓶製造の某メーカーの株価は、前日比26.8%増のストップ高で取引を終えた。前日に第1四半期決算の大幅上方修正が発表され、この業績上振れのインパクトが主原因である。これには中国人観光客のインバウンド需要がとりわけ強い商品とされる炊飯器及び魔法瓶の爆発的売上が背景にあると見られている。実際、密封性及び保温性が極めて高い魔法瓶やスープジャーは、私が帰国のたびに頼まれる人気商品の一つである。そのほか、哺乳瓶等の子供用品、サプリメント等の健康食品、美容用フェイスパック等の化粧品など中国の友人や知人から頼まれる日本商品のお土産ラインアップは、今後の日本企業の業績を予想する上で大きなヒントとなる可能性を秘めている。
(瀋陽久光百貨店「ジャパンフェア」の新潟商品展)
さて、今月開催した瀋陽久光百貨店「ジャパンフェア」の新潟商品展で、県産品の包丁の切れ味を商品ごとに細かく見定め、品質の違いを確認しつつ、意中の商品を購入する顧客を見かけた。そのほか、強火への耐久性があり焦げにくい鉄製フライパン、手動式みじん切り機なども中国で大人気の県産品である。 普段の生活を安全でより便利に快適なものにする道具を追求する中所得者層が急増する中国市場において、細部にわたり品質向上の努力を続けてきた日本商品に信頼を寄せ、理性的に消費行動する層が着実に増え、過度な贅沢品を避けつつ、機能や技術の高さにお金を払う余裕をもつ、成熟した消費行動が増えてきていると実感している。特に大都市圏の人々は、冷静な見方をしている人が多く、政治的摩擦や歴史問題といった世界とかけ離れたところに身を置き、自分自身の生活に根差した「日本観」を持っている人が大変多いことに気が付く。品質の高い日本製品を使った経験、快適だった訪日旅行での体験、周りの友人や知人から聞いた等身大の日本人の姿、そのほとんどが好意的で、驚きにも似た感想を持っている人々が多いのが実情であろう。
(新潟商品展で並ぶ鉄製フライパン、包丁)
日本商品の多くは、「使ってみれば、その違いは誰にでもわかる」、ただし、過去を遡ると、価格が高いため、使ってもらうことが難しかった時代があり、現在では、所得水準の向上及び元高円安という経済環境の変化を背景に、商品の違いを理解できる中国の人々が増え、少なくとも都市部には巨大な市場が急浮上してきた。現状の日本商品に対する高い評価は、ブームに踊らされたものではなく、ブランドに依存した憧れでもなく、見栄えよいデザインだけに頼るわけでもなく、生活実感に基づいた高い品質を保証する真面目な態度が広く認知されてきた現象のように思えてならない。切れ味の良い包丁、安全安心で使いやすい鉄製フライパン、使い心地が良い手動式みじん切り機・・・。中国の人々の日本商品を見る「眼」の多くは、暮らしを便利で快適にする高品質な「お買い得」商品を冷静に判断できる水準にまでレベルアップしてきている。もともと中国の人々は、自分自身で見たもの、聞いたもの、経験したものを最優先に信じる現実派が多い。優れた日用品の特長そのもの一つ一つは些細なことかもしれないが、日常生活の中でこれら商品を活用する経験を通じて日本への信頼感を積み上げていく効果は大変大きいものと言えるだろう。(わ)
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