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大連レポート

○対日投資に係る期待 ○「爆買い」の行く末

2015-09-15

○対日投資に係る期待
 日本貿易振興機構によると、昨年から今年にかけ、対日投資の相談案件が増加傾向にあるという。日本政府に掲げる「日本再興戦略」の中で、対日投資促進は重点課題の一つとされ、2020年に対日投資残高を倍増(35兆円)させることが盛り込まれており、この目標達成には中国からの投資をいかに増やすかという要素が大変重要になってくることは疑いの余地がないだろう。 
 このような動きを裏付けるかのように、当事務所へのビジネス相談の内容にも質的な変化を見せている。1997年の事務所開設以来、これまで寄せられてきた相談内容は、県関係企業の中国市場開拓支援、中国での拠点設置支援、近年減少傾向ながらも中国投資相談がその大多数であったが、その逆の流れとして、対日投資や日本での拠点設置に係る具体的な相談が徐々に出始めている。 
 一例をあげると、新潟への送客実績でトップクラスの中国系旅行会社が新潟市内に事務所を設けたいという相談、さらには、新潟県産品を含む日本商品の中国国内代理店を手がける貿易会社が日本国内で事務所を設けたいという相談など。前者の相談の背景は、中国からの訪日観光客が右肩上がりの昨今、自社内でランドオペレーターの役割まで担い、より機動的に送客して利幅を取ろうとする意図があることが想像できる。また、後者の相談の背景は、伝統工芸品を中心とした高い技術を誇る日本商品、そのほとんどは、中小企業が担い手であり、それ故に海外への貿易取引をカバーする余力があまりない企業も多い。そこで、中国企業が日本国内に法人等自社の拠点を設置し、中国市場で知られていない良質な日本商品を掘り起し、拠点主導の日本国内取引により商品を仕入れ、自社グループ内で貿易取引を処理しようとする目的が透けて見える。これらの動きは決して中国企業に限ったことではない。例えば、中国に現地法人を持つ日系企業から、新潟県を含む地方都市への拠点設置を相談されたケースがあり、当県への企業進出に関する優遇措置等に係る資料を提供した実績もある。今後の中国経済を不安視する声が日増しに強まる中、急速に進んできた元高円安の水準を睨みながら、企業活動はその水面下で徐々に違った流れを見せ始めている。(わ) 
○「爆買い」の行く末
中国商務部及び吉林省人民政府等の主催により、東北アジア博覧会(9月1日~6日、吉林省長春市)が開催され、当事務所取りまとめにより、県関係企業4社で出展した。全9館の1つである北東アジア展示館には、日本ブースのほか、韓国、モンゴル、ロシア、北朝鮮ブースが軒を連ね、多くの来場者で賑わった。日本ブースには当県出展のハウスウエアのほか、売れ筋の南部鉄器や陶器類、さらには保健食品や日用雑貨品など訪日観光客の「爆買い」アイテムが集められていた。

 さて、この「爆買い」、この先も続いていくのだろうか。日本の大手百貨店やショッピングモールは訪日観光客の消費が空前の伸びを見せているが、これとは対照的に、中国で多数の高級ブランドを抱える百貨店等の売上は伸び悩んでいるという。習近平政権の倹約令や反腐敗運動による高級品の消費の冷え込みも大きな要因だろう。いずれにしろ、中国政府は、膨らみ続ける海外消費をこのまま野放しにしておくはずはなく、国内消費に回帰させる内需拡大策を強力に推進してくる可能性がある。すでに今年6月、消費者ニーズの高い一部の外国製日用品を対象に輸入関税の引き下げが実施され、内外価格差の縮小に乗り出した。さらに、保税倉庫を活用した越境ECビジネスがこれから急速に拡大していくことが予想され、外国製品をより安く手軽に購入できる環境が整いつつある。また、今後、中国税関当局が海外から持ち込まれる手荷物や郵便物の検査を厳格化する規制に政策転換して、徹底的に抑止効果を狙うことも十分考えられる。元高円安で享受してきた「為替差益」がこれからも続くか否かは不透明で、「爆買い」は、為替変動に左右されない魅力ある商品を除き、今後とも長く続いていく保証はどこにもない。(わ)