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大連レポート

○事務所の業務を振り返って ○離任のご挨拶(渡辺慎一)

2016-03-27

○事務所の業務を振り返って
 「環境の変化に対応できない者はやがて淘汰されていく・・・」ダーウインが残した有名な一節は、現在でも様々な業界で通用する名言でもある。当事務所は、新潟県が経済界及び関係自治体の協力を得て設置した中国で唯一の代表事務所で、1997年3月以来、来年で開設20年を迎える。開設当時の関係資料を見直すと、大連は、東北3省の交通・物流の要衝として、「経済技術開発区」による対外開放をいち早く進め、当時の薄大連市長の強い指導力を背景に、日系企業の投資環境の優位性を前面に打ち出し、大連市全体が熱心に日系企業の誘致活動を展開、西暦2020年までに東北アジア経済圏の金融、貿易等の中心となる目標を掲げ、将来的には開発区全体を自由貿易地域として「北の香港」にするという壮大な構想をもっていた。そして現在、海上輸送の利便性を活かした加工貿易を目的とする製造工場が集積する大連進出の日系企業は、本社及び日系顧客向けの販売を主流とする企業も多く、近年の人件費高騰や為替変動の影響を受けて苦境に立ち、体制の見直しを余儀なくされ、すでに様々な影響が出ている。このように開設当時からの劇的な経済環境の変化を見るにつけ、まさに隔世の感を禁じ得ない。 
 さて、開設当時から現在に至るまで、県関係企業のビジネス支援は、当事務所の主要業務と位置付けていることは変わっていないが、中国経済を取り巻く環境の変化に応じて、企業支援の内容にも質的に大きな変化を遂げてきている。90年代から2000年代初頭にかけて、県関係企業の中国投資・進出及び委託加工への支援ニーズが高く、中国の経済発展と歩調を合わせる形で企業進出は増え、その前段として、県からの数多くの企業視察団に当事務所が対応してきた時代があったが、近年は、経済環境の変化とともに、これら要望は衰退の一途をたどっている。 
 先般、中国商務部は、「2015年の社会消費財小売総額が30兆1千億元に達して、前年比10.7%増加し、社会経済の成長に対する消費の貢献度は66.4%になり、これまでの投資と対外貿易の拡大を中心とした経済成長モデルから国内需要を中心としたモデルへ、とりわけ消費を中心とした経済成長モデルへの重大な転換の実現に成功した」と説明した。2015年の出国者数は1億2千万人、海外での消費額は1兆5千億元で、このうち少なくとも7千億元から8千億元が買い物に充てられたという。このような経済情勢の変化に対応して、当事務所の業務内容も、中国の巨大マーケットを地方経済の活性化に取り込むため、日本へのインバウンド観光客の誘致、地域特産品の輸出促進等の販路開拓といった経済活動にも軸足を置くようになり、事務所設置当時にはあまり想定していなかった業務のボリュームが増えてきている。 
 また、すでに進出済みの県関係企業の現地活動支援へのニーズも潜在的に高く、当事務所の業務として、これらニーズをいかに掘り起し、主体的に取り組んでいくか、その成果が問われる時代に入っている。具体的な業務の中では、新たな販路拡大を目指したビジネスマッチング、組織運営等を含めた法的対応、外資企業に対する突然の政策変更に対する対応、商習慣が異なる地域におけるマーケティングなど、当事務所のような自治体職員では対応しきれない専門的な相談内容に対して、日頃から培ってきたネットワークをフルに活用して、様々なプレーヤーをコーディネートできる力が強く求められるようになったと感じている。広大な中国を活動範囲に、変化し続ける経済環境において、企業ニーズも刻々と変化し、当事務所に寄せられる相談や要望も変化し続ける中、情報や人を繋いでいくことの大切さについて、日々の業務を追うごとに、繰り返し実感し続ける駐在員生活であったと振り返っている。(わ)
○離任のご挨拶(渡辺慎一)
 このたび、3月末をもって新潟県大連経済事務所の所長を離任し、4月1日付けで新潟県知事政策局国際課中国室長に異動します。2013年4月からの3年間の任期中(前回任期と合わせて6年間の駐在期間中)、大変にお世話になりました。4月より、後任の新所長には新潟県庁から小玉邦夫が赴任いたしますので、当事務所の活動につき、これまで同様、変わらぬご支援とご協力を賜りますようによろしくお願いします。 
 末筆になりますが、これからの皆様のご健勝とご発展を祈念いたしまして、離任のご挨拶とさせていただきます。(わ)