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大連レポート

○東北振興策に新たな展開 ○「日本製品中国市場販売支援会」の新潟訪問

2017-01-22

○東北振興策に新たな展開
  東北三省(遼寧省、吉林省、黒龍江省)の景気低迷が言われて久しい。昨春大連に赴任したばかりの筆者の目には、東北の玄関口に相応しい活気に満ちた街と映るが、地元の方々からは「デパートでの買物客が随分少なくなった。春節前の歳末商戦の時期でも寂しい限り」、「外資企業の縮小・撤退で失業者が大勢出ている」といった声が聞かれる。実際、高級百貨店の大連久光百貨が昨年9月に閉店、また県の調査では2005年に大連等遼寧省に進出していた県内企業は20社あったが、2015年は約1/3の7社にまで減っている。相次ぐ汚職事件に加え、1月17日には遼寧省長が過去の統計データに水増しがあったことを公式に認める等、遼寧省を始め厳しい状況にあるのは事実である。 
  東北三省のGDP成長率は、2014年以降全国平均を下回っており、2016年上半期は、全国31省・自治区等のうち吉林省6.7%(26位)、黒龍江省5.7%(29位)、遼寧省-1.0%(31位)という状況である。低迷の原因として、所謂「重厚長大型産業」への依存が生産過剰、市場価格低迷、地下資源の枯渇等を招いていること、サービス業が弱いため景気を支える力が弱いこと、国有企業の割合が高く地域経済活性化・市場機能高度化を妨げていること、人材の流出、高齢化に伴う社会負担増等が指摘されている。中国政府も、50~60年代に重工業地帯として中国経済を牽引し、現在でも食糧・エネルギー生産基地として全国的にも非常に重要な地域である東北三省の経済低迷を重視しており、昨年4月「東北の旧工業基地の全面的振興を推進することの重要性・緊急性を十分理解し、断固としてこの壮大な事業を新たな段階に押し上げる」と宣言し、国有企業改革、日露韓等との連携強化、ハイテク製造・電子・バイオ医薬・新材料等新興産業の育成、観光・養老・健康・レジャー産業の強化、農業の高度化、イノベーション・起業支援、都市インフラ・公共サービス整備等の民生保障などを重点取組とする所謂「東北振興策」の新たなガイドラインを発表した。次いで8月には、2016~2018年の3年間に東北振興に向けて実施する127件のプロジェクト、11月には東北振興に係る14の具体的実施措置を立て続けに制定した。上述の127プロジェクトの投資総額は、推計で日本円にして約24兆円とも言われ、中国政府の本気度が伺われる。プロジェクト内容は一部しか公表されていないが、各省幹部の発言等から、遼寧省はハイエンド設備製造業・ロボット・インテリジェントプラント・バイオ医薬・光電子・宇宙飛行産業・電子商取引等、吉林省は現主要産業である自動車・石油化学・農産品加工の高度化に加え、医薬健康・設備製造・電子情報・観光業の育成発展、黒龍江省は食品加工・農牧畜業・観光・介護健康等の育成発展に注力していくと考えられる。 
  昨年11月発表の東北振興に係る具体的措置でユニークに感じたのが、四川震災復興の原動力として高く評価される「対口支援(マンツーマン支援)」の導入である。遼寧省と江蘇省、吉林省と浙江省、黒龍江省と広東省を1対1で連携させるとともに、遼寧省瀋陽市と北京市、同大連市と上海市、吉林省長春市と天津市、黒龍江省ハルビン市と広東省深セン市を組ませ、幹部の相互派遣等を通じ先進地のノウハウや資金の東北移入を狙う。 
  さて、新たな展開を見せつつある東北振興策だが、今後本県とどう関わって来るのだろうか?本県と友好提携を結ぶ黒龍江省の陸省長は、昨年6月の中国日本商工会・日中経済協会との会談で「食品加工」、「グリーンエコ農業」、「観光・養老・ヘルスケア」等での日本との提携強化に言及したという。食品加工や農業、観光は本県の強みでもあり、これまでの交流実績をバネに、新たなビジネスチャンス創出の可能性ありと考える。また2月1日、現遼寧省外事弁公室主任の孫大剛氏が駐新潟総領事に就任される。今後本県と東北三省との経済交流の一層の拡大が期待される。 (ぎ、こ)
○「日本製品中国市場販売支援会」の新潟訪問
  日本に詳しい大連の貿易、旅行会社の総経理で構成される上記支援会のメンバー3名が、昨年11月11~13日に新潟市、佐渡市を視察した。今回の目的は、中国市場でヒットしそうな県産品、新規旅行コースの開拓。白石会長は「トップダウンの中国では、総経理が自身の目で見るのが一番。無名異焼は中国でも売れそう。先ずは今夏、佐渡への富裕層送客から始めたい。」と語ってくれた。 また視察メンバーの一人は、来夏の新潟港、両津港へのクルーズ船寄港も検討中とのこと。(こ)