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大連レポート

〇中国におけるコロナ防疫対策の大転換と今後の見通しについて

2022-12-28

127日に中国国務院が新型コロナウイルス対策に関する新たな通知を公布しました。これまでの厳しい規制を大幅に緩和するこの通知を受け、中国でのコロナ対策は新たな段階に入ったとの受け止めが広がっています。

通知では、感染者が確認された地域を高リスク地域に指定する際の恣意的な対象地域の拡大を禁止するとともに、リスク地域指定の解除基準を明示したほか、国内移動時における大きな障害であったPCR検査についても検査実施の最適化に関する基準を明確にしました。

これまでは多くの都市で週2回、全市民対象の定期的なPCR検査を実施していました。それに加え、飛行機、鉄道等を利用する際には48時間以内に受けたPCR検査結果の提示が必要とされ、更に目的地でも再度、PCR検査が義務付けられ、出発地のリスク区分に応じ、行動制限も課されるなど、国内移動を抑制する意図が非常に強く感じられていました。

新たな通知では、PCR検査の対象を非常に小さな範囲に限定し、全市民対象のPCR検査の実施は不要としたほか、飛行機、鉄道等を利用する前後での検査も求めないこととなりました。このため、PCR検査を受けるために、頻繁に行列に並ぶ必要もなくなり、国内移動を制約する重しが取れた形となりました。

今回の規制緩和を受け、早速、春節時期の航空券の予約検索が増えているとの報道が出ており、国内旅行への関心・予約等の動きが急速に拡大しているようです。国内旅行では、中国のハワイと言われる海南島やこれからシーズンを迎えるウインタースポーツ関連の検索が急増しているとのことで、国内での人の流動が活性化し、中国の人々の消費意欲を刺激していくのではないかと期待しています。

その一方で、あまりにも急速に規制緩和が行われたため、コロナウイルスの感染爆発が起こるのではないかとの不安も生じています。定期的なPCR検査がなくなるため、どこに感染者がいるか分からず、実際に感染し、突然症状が出た場合、どのように対応すべきかが分からないとの懸念も広がっているようで、感染状況を確認できる抗原検査キットや解熱鎮痛剤の購入の動きも顕在化しています。

  いずれにせよ、今回の規制緩和により、中国もようやく“withコロナ”に向けて舵を切ったと捉えていますが、今までゼロコロナを徹底していた分、集団免疫の獲得までは紆余曲折が生じることも想定されます。それでも、そうした困難を乗り越え、海外との往来再開は急速に進んでいくのではないかと考えており、今後の往来再開、経済交流の活性化を見据えて、しっかりと準備を行う必要があると感じています。

  

写真左:市販のコロナ治療にも

効果があると言われる医薬品

※残念ながら、偽物も出回っているとのこと           写真右:市販の抗原検査キット