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大連レポート

○高齢者介護ビジネスに関すること

2014-09-15

 9月4日~5日、大連市政府関係機関等及びジェトロ大連事務所の主催により、日中高齢者産業交流会が開催された。この交流会は大連国際老齢産業博覧会との併催で、日中高齢者産業フォーラム兼個別商談会及び介護施設等視察で構成され、当該フォーラムには県関係企業を含む16の日系企業等約200名の出席者で賑わいを見せていた。
(日中高齢者産業フォーラム開催の様子)
 中国は2013年に60歳以上の高齢者が2億人を突破、今後も高齢者人口は増え続ける中、一人っ子政策等の影響で高齢化率が急速に高まっていく。一方、高齢化が先行して進む日本は、介護保険制度の運用等の政策面及び高齢者介護ビジネス等の産業面、この両面ともに先進地域であり、中国は日本に学び、かつ、日系企業の中国での事業展開に大いに期待している現状がある。
 中国の高齢化問題に関して、まずは固有の事情を理解する必要がある。「未富先老」、これは社会が経済的に豊かになる前に高齢化が進展する中国の現状を指す言葉であるが、経済発展と高齢化とが軸を一にしてきた日本と決定的に異なる点。さらに、都市と農村、東部沿海地方と西部地域など、経済発展の度合いが著しく異なる地域を抱えている国情もあり、課題解決は容易ではない。
 さて、現段階で、高齢者介護施設の利用者負担はどれくらいなのか?ジェトロ大連事務所の資料によれば、遼寧省の年金平均支給額(2013年)は月額1,849元、今回視察した介護施設は部屋代1,600元(公設)~、2,600元(私営)~、その他に食事代等の費用加算という現状。フォーラムの中で、「施設やベッド数を増やしても個人負担が高すぎて利用することができない」という現状が報告されていた。一般に、公営施設は三無老人(無収入、労働能力無、扶養者無)を中心に利用者が限られ、民営施設は高い費用が前提となり、施設利用者が広がりにくい背景がある。日本の介護保険制度に類する制度が中国では未整備という状況下、劇的な改善を望むことは難しいと言えよう。
 現状の中国政府の政策は、家族での介護機能の低下を前提に、高齢者介護サービスの強化を明確に打ち出している。具体的に言えば、在宅介護では支えきれない部分を「社区(一定地域内のコミュニティ)」のデイサービスやショートステイ、施設介護(老人ホーム等、公設と民営の併存)で補完していく方針を示している。現実には、高齢者の在宅志向は根強く、家政婦を頼んで高齢者の面倒を看るケースが増える中、介護の専門知識を持たない家政婦では、トラブルも多いという 。

(西崗区老人総合服務センター〔公設〕のパソコン室)
 最近数年の短期間に、法制度上、民間資本の参入促進策のルール明確化、外資系企業の独資設立許可等が規定され、中央政府レベルで、施設用地の優先取得や施設の建設・運営に関する補助金、各種税金の減免措置の拡充が示され、同時に、地方政府による高齢者産業の育成推進も急速に広がりを見せている。このような動きに対応し、大手介護サービス企業を含む日系企業の進出が数年前からすでに本格化している。介護施設の整備(土地所有含む)、介護サービスを担う人材育成、サービス運営ノウハウ、中国式収益モデルの確立など、高齢者産業への参入に関する課題は多く、これを日系企業単独の経営資源だけでカバーすることは著しく困難。加えて、各種の許認可を見据えた地元政府との関係構築は必要不可欠であるため、現地有力企業をパートナーとした事業展開が現実的な姿として想定される。(わ)