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大連レポート

○中国のメディアと情報受発信ツール

2015-07-28

 6月28日から7月3日まで、中国駐新潟総領事館の呼びかけにより組織した新潟県マスコミ各社友好訪問団の一員として、北京及び湖南省を訪問した。中国外交部、中国対外友好協会等を訪問したほか、斬新なデザインの新社屋として有名な中国中央電視台(CCTV)、全国的に人気のバラエティー番組を手がける湖南電視台を視察するなど、大変貴重な機会をいただいた。

 周知のとおり、中国のテレビ局は、中央電視台のほか省や市レベルの地方ローカル局が多数あり、ケーブル放送及び衛星放送の普及によってすでに多チャンネル化の過当競争に突入している。中国のメディアは政府管理下による統制が強いとのイメージが先行している感があるが、実際は商業化が著しく進んでいて、収益を主に広告収入に依存している背景もあり、視聴率を尺度とした大競争時代に入っている。メディア全体の中でテレビ局の広告収入は既にトップから陥落している厳しい局面にあるとの中央電視台の説明は容易に理解できた。また、青少年及び女性をターゲットとした番組作りを戦略とし、日本を含む海外の娯楽番組を参考にしているという湖南電視台の現状は、テレビ離れへの歯止め、視聴率獲得という厳しい局面に立って番組制作をしている一端を垣間見ることができた。
 そのような状況を裏付けるように、「メディア青書・中国メディア産業発展報告(2015)」によれば、中国の昨年の広告売上高でインターネットが1500億元(約3兆円)超にのぼり、初めてテレビを上回り、一方で、新聞の広告収入は4年連続減少、その減少幅も15%に達したとの発表がある。中国のインターネット利用者は、2014年末で6億4900万人、その85.8%に当たる5億5700万人はスマートフォンを中心としたモバイル端末であるという。
 個人的な肌感覚で恐縮であるが、中国の都市部において、情報受発信ツールとしてのスマートフォンへの依存度が極めて高い。地下鉄の中、駅の待合室、レストラン、空港等あらゆる場所でスマートフォンを見ている人がとにかく多く、日本とは比較にならないほど多いという印象がある。例えば、中国の空港での搭乗待ち時間、おしゃべりをしている人以外、そのほとんどはスマホをいじっているという状況。たまに文庫本を静かに読んでいる人を見かけると、たいていは日本人である。(文庫本の文章が日本文なのですぐにわかる。搭乗後も引き続き読む人が多いと推察する)
 さて、中国の方々、スマートフォンで一体何をしているのか?一番人気は微信(英語名:WeChat)であろう。中国版LINEと表現すればわかりやすいが、実際にはFacebookとLINEの両方の機能を持つ。微信の最大の特徴は、自分が登録した仲間内だけで利用できる情報受発信機能があるソフトで、外部に広く公開する微博(中国版ツイッター)とはその点で大きく異なる。もともと、中国の方々はテレビや新聞を中心とした官製メディアよりも、身近で信頼できる方々からのクチコミ情報を好む傾向があり、微信を通して、クチコミ情報をネット上で手軽に交換できる機能は瞬く間に広がった。その内容は、個人的な日常の出来事、たわいもない自慢話など路地裏の世間話的なものが中心で、きめ細かくチェックするに値しない内容も多いが、一方で、生活上の便利情報、速報性のある特ダネ、政治的な内容も含む社会論評に至るまで、たまに貴重な情報がまぎれているので、結局は全く無視するわけにもいかず、地道に確認する毎日である。最近では、代購(代理購入ビジネス)、お店や商品の宣伝などビジネス目的での利用も多く、アポイントメントや業務上の資料・写真の送受信を微信経由で行うケースもあり、微信が仕事上で必要なツールとして利用せざるを得ない環境となっている。また、お金の支払いができる決済機能まで普及し、生活を便利にする必須ツールとして手放せなくなっており、気が付けば、日々微信に費やす時間は雪だるま式に増え、「微信疲れ」する毎日でもある。(わ)