2026-06-03
マイナス20度を下回る日も珍しくない、黒龍江省ハルビン市の冬。長く厳しい寒さを越え、4月末になると、市内にはある花の香りが漂い始めます。街角や公園、学校の構内にまで広がる、小さな紫色の花々――それが「ライラック」です。近年では、日本の人気バンド Mrs. GREEN APPLE の楽曲名として耳にしたことがある方も多いかもしれません。
日本では桜が春の訪れを象徴しますが、ハルビンではライラックがその役割を担っています。厳しい冬を越えた街に、甘くやさしい香りとともに暖かな空気が戻る瞬間は、ハルビンの人々にとって春の到来を実感する時節です。
写真左:穂状に咲くライラックの花
写真右:黒龍江大学構内に咲くライラックの花
ライラックはヨーロッパ原産の落葉花木で、日本では「紫丁香花(ムラサキハシドイ)」とも呼ばれます。中国語では「丁香花(ディンシャンホア)」といい、白や紫、薄紫、ピンクなどの小花を穂状に咲かせるのが特徴です。耐寒性が高く、冷涼な地域に適した植物であることから、北海道でも街路樹や公園木として親しまれています。北海道とほぼ同じ緯度に位置するハルビンで広く植えられているのも、自然なことといえるでしょう。
ハルビン市にとってこのライラックは、単なる観賞用の花ではなく、街の歴史や文化とも深く結びついています。100年以上前、まだハルビンが小さな漁村であった時代から松花江流域に自生していたとされ、ロシア人の流入とともに新たな品種も持ち込まれました。1930年代には既に道路沿いに植栽され、街路樹として街の景観を彩っていたといいます。1988年には、ハルビン市人民代表大会において正式に「ハルビン市の花」に制定され、現在では市を挙げてライラックを活かしたまちづくりが進められています。2018年に策定された「ハルビン市ライラック特色都市建設計画」では、2030年までにライラックの栽培総数を200万株に拡大し、専門園や特色街路を整備する目標が掲げられています。実際に街を歩けば、至るところでライラックの花と香りに出会うことができ、市民生活に深く根付いていることを実感します。一方、新潟県の花は「チューリップ」です。色鮮やかな花々が一面に広がる春の景色は、多くの県民に親しまれています。新潟県と黒龍江省は、1983年に友好提携を結んで以来、40年以上にわたり、人的交流や経済、文化、教育など幅広い分野で交流を重ねてきました。
2026年の春、私はハルビンの街で咲き誇るライラックを眺めながら、新潟でもチューリップが見頃を迎えている頃だろうかと思いを巡らせました。これまで多くの黒龍江省の方々が新潟を訪れ、新潟に関わった方々がハルビンへ戻っていきました。互いの土地で春の花が咲く頃に、相手の地域を思い出し、懐かしみ、再び訪れたいと思える関係がこれからも続いてほしいと願っています。
人と人との交流が生み出す信頼や親しみは、一朝一夕に築けるものではありません。ライラックの花が長い時間をかけてハルビンの人々の生活に根付いてきたように、新潟県と黒龍江省との友好交流もまた、長い時間をかけながら着実に育まれてきました。今後もそのつながりを次の世代へとつないでいけるよう、新潟県ハルビンビジネス拠点では微力ながら尽力してまいりたいと思います。(S)
写真左:ハルビン市内「ライラック公園」で鑑賞をする人々
写真右:様々な色に咲くライラック
(参考)
https://botanica-media.jp/libraries/plants/posts/282
https://www.shuminoengei.jp/m-pc/a-page_p_detail/target_plant_code-167
https://wlt.hlj.gov.cn/wlt/c114169/202505/c00_31843059.shtml
http://mzw.hlj.gov.cn/mzw/c116380/202406/c00_31741460.shtml