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大連レポート

○中国東北部の経済成長減速

2016-01-28

 1月14日から3日間の日程で、泉田知事を団長とする新潟県代表団が友好提携先である黒龍江省を訪問、黒龍江省の陸昊省長と会談し、今後の交流について意見交換した。陸昊省長といえば、北京副市長、共青団第一書記を歴任し、2013年に全国最年少で省長に就任した逸材で、地方政府での経験をステップに将来の中央政府幹部の有力候補と目されている。知事との会談の中で、両地域の特性を活かした共同プロジェクトの立上げが提案され、省の経済発展に直接繋がる事業の推進を強く希望していた。これは省長就任以来、省の経済成長率は中国各省の中で下位に低迷し続けている中、日本の地方政府との経済交流により、両県省が持つ潜在的な優位性を活かし、地域経済の発展に結びつけたいという強い意欲が感じられた。
(泉田知事と陸昊省長との会談の様子)
 さて、肝心の中国経済、年初からの株価急落など経済成長の減速に関する報道が目立っている。中国国家統計局が今月19日に発表した2015年の国内総生産(GDP)は対前年比で6.9%増(物価変動の影響を除いた実質ベース)となり、政府目標の7%に迫る水準に着地した。この数字、先進諸国の経済成長率と比較すれば、依然高い水準である。ただし、かの有名な「克強指数」(李克強首相がGDPよりも重視する経済指標。発電量・鉄道輸送量・貸付総額の3つの統計項目)の直近統計数字の2項目を見てみると、中国国家統計局発表の2015年の総発電量は5兆6,180億キロワット時、対前年比0.2%減で、通年の減少は1968年以来初めて。さらに、中国国家発展改革委員会発表の2015年の鉄道貨物輸送量は対前年比11.9%減の33億6千万トン、過去最大の減少となった。発電量や貨物輸送量の落ち込みは中国の実体経済をより反映した数字として見る向きがあり、実際には減速傾向が色濃いと捉える専門家が多い。
 大連から吉林省や黒龍江省への出張で頻繁に利用する高速鉄道、そのたびに眺める車窓からの風景は私にとって既にお馴染みの風景となっている。まずは市内の密集した集合住宅地から始まり、しばらくすると郊外の新興住宅地が見え、やがて、広大な農地や丘陵地が広がる風景へと変わっていく。その郊外には地方政府主導の都市開発プロジェクトのビル群が出現するが、開発途中で工事が進んでいない区域、車やひと気のない高層住宅が散見され、何度見ても寒々とした気持ちにさせられる。都市部から離れた郊外のこのような風景、実は中国国内の多くの場所で見ることができる。これは、数年前から中国各地で進められてきた「都市化」政策がその背景にある。大都市圏の経済減速を補うように、その周辺地域や郊外に広がる農村地域を「都市化」して新たな経済発展に繋げていこうとする考え方で、高度経済成長を強力に牽引し続けると信じられてきた。しかし、実際には過剰投資、過剰供給に陥っている開発プロジェクトが実に多い。強権を持った政府が先行投資して開発、これに実需が追いつく限り問題はなかったが、多くの地域でいよいよ過剰投資のゆがみが顕著になってきた。まず始めに大きな箱を作って、後から中身を埋める的な発想から来る投資と開発は、その多くが限界に来ている証左であろう。
 経済成長を決する3つの要素である消費、投資、輸出入の中で中国経済は消費がGDPの約半分を占めており、中国政府は、消費主導型の成長への移行を目指している。折しも、春節直前で消費が最も集中する時期、都市部の繁華街はイルミネーションが光輝く賑やかな季節となったが、今後どのように消費を拡大させていくのだろうか?このほど、遼寧省は観光業の発展と消費拡大を促すため、「週休2.5日制」を奨励すると発表したところ。遼寧省といえば、かつて、李克強氏が省書記時代に推進した五点一線計画に代表される投資主導型の経済モデルを基礎とした中国東北部の先進地域、しかし現在ではそのモデルは瓦解し、各省別の経済成長率で最下位グループに転落した地域であり、まさに「苦肉の策」の様相を呈している。(わ)